【不動産コンサル事例 vol.11-3】この土地、ここまでが私のものって確定させたいだけなのに…。
2025.10.21
お客様より実際にサンジミアーノにいただいた相談事を、どのように解決するのか?様々な事例をご紹介します。
今回のご相談内容はこちら。
前回のおさらい。

お客様
「境界非確定」の状態だったうちの土地。問題解決のために「境界確認書」の作成をすることになったの。
それには先代から折り合いの悪いお隣さんのご協力が必要なんだけど、断固拒否されてしまって。
このままじゃ私の土地、いつまで経っても売れないわ……。
土地・家屋の売却をスムーズかつ安全に行うためには、「境界非確定」状態を解消する必要があります。
「土地の境界を確定」させるために、本来は隣人の協力が必要なのですが、頑なに拒否され協力していただくことができません。
相手が頷くまで説得を続けるのか?それとも別の道があるのか?続きを見ていきましょう。
【不動産コンサル事例 vol.11-2】その土地、どこまでが貴方のものか確定させましょう!
境界確認ってどうやればいい?「境界確認書」とは?
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隣地の主
………………。
この土地、ここまでが私のものって確定させたいだけなのに…。

お客様
やっぱりだめね。あの人、ああなるともう二度と協力してくれないわ。息子さんも10年以上前に上京して連絡先も知らないし…。どうしましょう。
土地家屋調査士や市役所職員の方にもご足労いただきましたが、門前払いを受けましたね。
以降は電話にも訪問にも応じていただけなくなりました。
残念ですが、このままではおっしゃる通りご協力いただくことは難しいですね。

サンジミアーノ
概ねの方は快く立会ってくれますが、立合いに非協力的な方も度々いらっしゃいます。
立ち合いに協力してもらえない原因は、
「過去のトラブルから慎重になっている」
「現在の境界に納得していない」
「忙しくて立ち会えない」
「隣地権者及び所在不明で連絡がつかない」
「地権者が遠方にいて立ち会えない」
など様々。
境界立合いを断られてしまったら?

お客様
協力してもらえない場合は、境界確定書を作ることはできないのかしら?
もちろん手はあります。まずは隣地権者に協力を断られた場合の対処法を順を追ってみていきましょう。

サンジミアーノ
隣地権者に協力を断られた場合の流れ
- 内容証明郵便で通知する。
まずはお相手(隣地権者)に境界の立会いをお願いする書面を、内容証明郵便で送ります。
これによって「○月○日に連絡しました」という証拠を残します。 - 土地家屋調査士(専門家)に相談する。
土地家屋調査士は、土地の境界や建物の場所を調べて、図面を作ったり登記の手続きをする国家資格の専門家です。
お相手との交渉事や、最終的には登記の手続きまでお任せすることができます。 - 筆界特定制度を利用する。
お相手がどうしても立ち会ってくれない、話が進まないなどの場合に使える制度です。
法務局に申し立てをして、国が境界を調べてくれますが、時間がかかります。 - 裁判(境界確定訴訟)をする。
筆界特定制度を利用しても解決困難な場合、最終手段として裁判所に間に入ってもらい、境界を決めてもらうことになります。
現状では
①内容証明郵便を送付し、
②土地家屋調査士(専門家)に依頼して交渉してもらいましたが、応じていただけませんでした。
次の手として考えられるのは③筆界特定制度の利用ですが…。

サンジミアーノ

お客様
その制度を使うと国が境界を調べてくれるのよね?もう少し詳しく知りたいわ。
筆界特定制度とは?
お相手と「連絡が取れない」「どうしても応じてもらえない」などの場合、法務局に申し立てをして、国が中立な立場で境界を調べてくれる制度です。
登記記録に基づき、法的に認められた筆界を明確にし、境界トラブルの解決をサポート。
境界確定訴訟を回避し、簡易な解決手段で所有者の権利を守るものです。
制度の利用の流れ
- 法務局に「筆界特定」を申請する。
筆界特定申請書、登記簿謄本、公図・地積測量図・境界に関する資料や土地の位置図や地図と、関係者(隣地権者)の情報などをそろえて、法務局(登記所)に申し立てます。手数料も必要となります。 - 法務局での準備作業。
法務局の登記官が申請内容を確認します。不備があれば補正指示がありますが、問題がなければ「筆界調査委員(土地家屋調査士)」が選任されます。 - 筆界調査委員による調査開始。
現地調査(実際の土地の境界を見に行く)、関係資料の収集、当事者や近隣者への事情聴取を行い、登記簿上の筆界が「どこだったのか」を特定します。 - 意見の聴取・閲覧。
関係する当事者(土地所有者など)に、調査結果について意見を述べたり、図面・資料の閲覧する機会を設けます。
調査結果に異議がある場合は、この段階で申し出ることが可能です。 - 筆界の特定。
調査結果・当事者の意見を総合的に検討。
筆界調査委員の意見も踏まえ、中立の立場で筆界を「ここ」と特定します。 - 結果の通知。
「筆界特定書」が作成され、各当事者に送られます。
内容は法務局で閲覧可能。
この筆界特定結果は「登記とは別物」なので、自動的に登記が変わることはありません。
「筆界特定制度」で特定されるのは「筆界」であり「所有権界」とは別のもの。筆界を示すにとどまりますが、強い証拠力があります。

サンジミアーノ

お客様
でも、やりたいことは「境界確定」でしょ?
「筆界」を特定したからって、本来の目的である「境界不確定の土地を売ること」にどう影響するの?
現状では隣地権者の協力が得られず、合意による境界確定(確定測量など)ができない詰みの状況ですが、筆界特定の結果を使えば次の行動がとれます。

サンジミアーノ
「筆界」を特定すれば、境界を確定測量できる!
結論から申しますと、筆界特定の結果があれば、買主側が安心して取引に応じてくれるようになります。

サンジミアーノ
「境界不確定」の土地(特に住宅用地)を売るために求められる「確定測量図(境界確定図)」。
隣地権者の協力が得られず測量できない場合は、「測量士が作成した精度の高い図面が作れない」「境界杭を入れられない」「隣地権者の確認印を押してもらえない」ために、「確定測量図(境界確定図)」を作ることができません。
そこで制度を使えば、筆界特定の結果をもとに境界を確定測量できるため、土地の面積が確定し、登記情報を買い主側に示せるようになるのです。
信頼できる「公的な境界情報」に基づくため、買主・仲介業者・金融機関からの信用が高くなります。

サンジミアーノ

お客様
土地が売れない理由である「境界不確定の土地へ不信感」が解消されるわけね。
ただし「筆界特定制度」でも問題が解決しない場合もあるので、注意が必要です。

サンジミアーノ
「どこが登記上の境界か」だけを特定したいのであれば、筆界特定制度によって民事訴訟を回避することはできますが、争点が「その土地の所有権自体(所有権移転・所有権の範囲・損害賠償など)」に及ぶ場合は、筆界特定だけでは不十分です。

お客様
今回のケースは筆界特定でなんとかできそうね。早期の解決は可能なの?
「筆界特定制度」手続きの所要時間・費用等は、土地の状況に加え、裁判所や専門家などで変動があります。
目安として半年から1年ほどの時間がかかることと、費用は「申請手数料」と「測量・調査等の手続き費用」が発生することをご承知おきください。

サンジミアーノ

お客様
それでも、お隣さんとのこれ以上の関係悪化は避けたいし、訴訟となると時間もお金も更にかかってしまうから避けたいわ。よろしくお願いします。
次の日…。

???
ごめんください。〇〇さん、いらっしゃいますか?

お客様
あら、お隣の息子さんじゃない!お引越し以来かしら、久しぶりね~。

隣地の主の子
ご無沙汰しています!
久々に親父の様子を見に来たら、玄関に未開封の内容証明郵便があって、慌てて内容を確認したんです。
親父を問い詰めたら、ついいつも通りに天邪鬼な態度を取って、引くに引けなかったみたいで。

お客様
えっ、それじゃあ……。

隣地の主の子
大事な相談を無視して申し訳ありませんって、反省してますよ。僕も一緒に立ち合いますので、早めに境界確認しましょう!
というわけで。
一時は肝を冷やしたものの、内容証明郵便がきっかけとなり、その後の流れがスムーズに運んだことで様々な問題が解決となりました。
どのような状況でも、諦めず手を尽くすことが、解決への糸口となることは少なくありません。

サンジミアーノ

お客様
立ち合いしてもらえたら、一か月ほどで境界確認書の作成まで終えられたわ。
境界で揉めるどころか、土地を売りたいんですって話したら、お隣さんが是非購入したいと申し出てくれたの。円満にスピード解決できそうよ。

隣地の主
確かに先代とは反りが合わなかったけど、娘である〇〇さんには関係のない事だと息子に言われてね……。
同じく不確定だったうちの土地も境界確定できるし、元気なうちは農業続けたいから土地も広げたかったし、不動産業者の丁寧な対応にも信頼がおけたから素直になれたよ。すまなかったね。
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