願わくば雪の降り積む朝に
2025.07.30
願わくば雪の降り積む朝死なん
―芭蕉ランボー慕い続けて―
猛暑厳しいこの8月。76歳になった今も、元気に過ごす私ですが、ふとこんな和歌を詠んでみました。
どこかで聞いたことのある響きだと思われるかもしれません。
そう、西行の有名な和歌を少しもじりながら、真夏にあえて雪の降る寒い冬を思い出し、その情景に自分の死を重ねてみたのです。
ここしばらく、私は反芻するように芭蕉の『紀行文集』と、ランボーの『地獄の季節』を読み返しています。
二人とも、自分の信じる道だけをひたすら歩き、ほかのものには目もくれず、たったひとつの道を突き進んだ人たちです。
自らの死を甘んじて受け止め、それでいて永遠に生き続けている人たちでもあります。
私もまた、そんなふうに死を迎えたい。そして、そんなふうに永遠に生きたい――。
真夏の強い陽射しのなかで、雪の朝を思い描きながら、そう願わずにはいられません。
Author/樫井 賢一